タル・ベン・シャハーの新刊「Joy of Leadership」を聴き終わりました。ウェルビーイングを組織にもたらせるかどうかが、リーダーシップの最大の差別化要因となったという非常に興味深いテーマの本です。この本のテーマとSHARPモデルという実践方法については前回のブログで書いています。(前回の記事はこちらから)
前回はパートIIまでの書評でしたので、今回はパートIIIの紹介です。パートIIIは変化へのPathway(道筋)ということで、いくつかのコンセプトが紹介されていました。
Unfreezeステージ:Change Status Quo(現状)から変化することの重要性。
変化を促進するためのツールとしてのAppreciated Inquiry(AI)とAs-If Principleというモデルが紹介されていました。
Appreciated Inquiry(AI)はデービッド・クーパーライダーらによって提唱されたポジティブ心理学をベースとした組織変革のアプローチ。過去の失敗だけでなく、特に成功からも学び、将来も成功することができるように未来を描くアプローチ。
As-If principle:リチャードワイズマンによって書籍化されているコンセプト。誰かや何かになりきる(As If)ことによって、すでにその状態を達成しているのと近い効果が得られること。SHARPフレームワークを実施する際に、あたかもそれらが最初からうまく実践できているかのように行動することによって、より高い効果が得られるとのこと。
またSHARPフレームワークの実践は、万人に共通する解決策(One size fit all)はなく、試行錯誤しながら個々にあった方法を編み出していくことが大事とのこと。
Refreezingステージ:いくつか実践した後に元に戻らないように、それらの新しい行動を習慣化(Ritual:儀式化)する、またビジュアルなどのリマインダーを用いる。新しい行動が習慣として定着できるようになるには、9ヶ月から12ヶ月ぐらいかかるとのこと。
箇条書きになってしまいましたが、パートIIIについては、あまり知らないコンセプトもあり勉強になったのと同時に、よく知らないので英語で聴くと消化不良になってしまった感があります。Appreciated InquiryやAs-If Principleはそれぞれ専門の本が出ているので、深く学びたい場合はそちらを読むといいかもしれません。
パートIIIでは、もう少し組織論もカバーされているかと思いましたが、あくまでもリーダーがこれらのツールを駆使し、いかに変化するかという個人の行動に焦点が当てられていたように思いました。まあリーダーシップの本なので、本題に沿った内容ではあります。
ということで「Joy of Leadership」の全体を聴き終わりました。新しい研究結果は少なかったものの、ウェルビーイング心理学教育をうまくリーダーシップ論に応用した良作でした。
SHARPフレームワークで提案されていた内容は、日本の企業や社会にはまだまだ斬新過ぎる内容もありました。例えばHealthで紹介されていた、野外で会議したり、歩きながら会議するとか、業務時間に運動を認めるなど。しかしそららの斬新なアイデアは、普通の会社では実施が難しいからこそ、差別化の要因になりそうです。
斬新な組織の事例として、娘が4月から通い始めたN高等学校があります。他の教育機関とは圧倒的に差別化がされていると感じます。またよく考えてみるとSHARPフレームワークを結構実践している機関なのではないかと思えてきました。ここの考察はまた別の機会にしたいと思います。
ということで「Joy of Leadership」のレビューでした。
いつ日本語版が出るか分かりませんが、素晴らしい書籍なので、機会があればぜひ読んだり聴いてみてくださいね。