私は年間で50冊ぐらい本を読んでいますので、紹介したい内容があればブログにて紹介していこうと思います。今回はデイビット・アトキンソン氏による「新・所得倍増論」です。
昨年彼の書いた「新・観光立国論」を読んで感銘を受けていましたので、今回も期待をして読みました。彼はアナリストというバックグラウンドから、常に数字を根拠に議論を組み立てていきます。それだけでなく外国人という視点から客観的に日本が抱える課題について指摘しています。
この本の大きなテーマは日本の生産性の低さです。5章からのなぜ日本人の生産性が低いか、を読む前に自分自身でなぜ日本の生産性が低いのかを先に考えてみてから、本を読んでみました。以下は自分の考えたことと本の内容の比較です。
①ロジカル(論理的ではない):日本社会では論理的でないことがたくさんあります。また論理的であることを教育としても強調していません。なぜ、こうなのか、本来こうあるべきだ、ということを考える力が社会全体で不足している。よって付加価値の低かったり、規制に守られた仕事がたくさん存在する。
→ アトキンソン氏はあまりロジカルのなさは指摘されていませんでいたが、その結果である付加価値が低く、生産性の低い仕事について指摘していました。社会の大きな課題としては女性の賃金、生産性が著しく低いこと。これはやはり日本全体として取り組んでいかなくてはならない課題だと改めて感じました。
②変化が苦手:①の続きでもありますが、日本人は物事を変えるのが苦手です。変化を嫌う雰囲気がありますし、新しいプロセスやルールを構築するよりも、今ある制度の中でいかで、いかに裏技を見出すかというほう間違った方向にエネルギーが注がれる傾向があります。これも日本式教育の賜物(弊害)です。昨年の選挙でも実態にそぐわずに、時代から遅れているルールがたくさんあることを実感しました。
→ アトキンソン氏もまさにこの点を指摘していました。日本は特にサービス業における生産性が低いとのこと。その理由としてはITなどを活用して、生産性を上げてこなかったこと。その他いろんな箇所で、変化を厭う国民性について指摘していました。
③過剰なサービス:行き過ぎたサービスを提供するあまり、付加価値が高くないことにまでリソースを割いてしまう傾向にあるように思います。日本の会社のサービス精神は素晴らしいですが、それがコスト高になっている場合もあります。
→ この類は特に本の中では述べられていませんでした。
アベノミクスが機能していないことは明らかで、大前研一学長も常にそのことを指摘しておられ、「心理経済学」などで解決策を提言されています。アトキンソン氏の論調は大前氏とのはまた別の角度での日本経済成長の提言であり、非常に有益な内容だと感じました。
私達市民は、日本政府の大きな方針については影響力がないですが、身の回りの理不尽でロジカルでないことを変えていくことができるのではないでしょうか。そのような市民の意識の変化が日本全体の意識の変化につながってゆくのだと思いました。